つれづれなるままに

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第91期棋聖戦五番勝負第4局の感想

渡辺明棋聖藤井聡太七段の対局は藤井七段の勝利となった。

将棋の内容としては、存分に藤井将棋の良さが現れた一局だったように思う。

いかにも直観的に指しづらい手を量・質共に優れた読みで補完し、指し切る。

これはなかなか真似できるものではない。これで藤井七段は晴れて藤井棋聖となった。

 

タイトルホルダーになる事は、今まで以上に対局以外の事に時間が割かれる。

関係者への挨拶、スポンサーへの配慮、各種イベントへの出演等々・・・

こういった部分もあり、タイトルを取った後バランスを崩す棋士は多い。

ここで踏みとどまれるか、または押し返されるのか、将棋以外の部分でのしなやかさにかかっているのではと考えている。

 

また、あまり注目されていないかもしれないが、今後の渡辺先生の挽回にも期待をしたい。

渡辺先生は、堅い玉形から細い攻めを繋げるというパターンを構築した棋士の一人だ。

対抗系での穴熊は勿論、矢倉でも隙があれば穴熊に囲い、玉の堅さ・遠さで優位に立つ将棋を指し、いわゆる「堅い・攻めてる・切れない」で勝利を掴み取ってきた。

しかし、AIの台頭によって新たなる指し方・考え方が発見された中で、現在は堅さよりもバランスを志向する方向性が将棋界の主流になりつつある。

そういった流れの中で渡辺先生も一度不調に陥ったが、現代のバランス重視型の将棋を取り入れる事に成功して復調した。

今回のように新しい風が吹いても、きっと渡辺先生はその力を吸収し己が力に変えるに違いない。そういう意味でも藤井先生と渡辺先生の今後の対局にも注目していきたい。